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本図は絹地に淡彩で描かれた軸物で、縦一二六・九cm、横五四・五cmの大きさである。筆者は、中国北宋の徽宗皇帝(約八六〇年前)と推定され、京都金地院にある秋景、冬景二幅(春景は紛失)とともに、四季山水四幅対に分かれたものであろうと考えられる舶載品である。 図柄は夏景とあるように、左下に大岩石と松の大樹をかき、右下谷底には小さい渓流にかかる橋の上に、長い杖をひく一道士が首をひねり、悠然と歩を運ぶ姿と山中の景観が、黒筆の濃淡とわずかな淡色でえがかれている。なお画面全体を仔細にみると、一陣の風雨が嵐気をよんで山容全体を包み、岩上の松や道士の冠のひもあるいは袖や裾まで、強くなびいていることに気づく。また山間の上にわずかな淡朱色がぼかされて、夕陽の名残りかと思われるものもみとめられる。これらの総体の画面からうける感じは、松風の音、谷川のひびき、はためく冠のひものうねりにまで耳を傾け、山中の静けさのなかにおきたこれら山水の声を深く楽しむ高士の自然と同化した詩情が迫ってくる。「谿声すなわちこれ広長舌、山色あに清浄身にあらざらんや」という詩を絵画に表現すれば、このようになるであろう。
それはとにかくとして、北宋画の謹厳剛直さと南宋画の余白暗示的な両画法が形式化される以前の、写実的な作風のなかに詩情を豊かにうたった主情的な作品で、中国画のなかにおいてもこれほど品位の高い優れたものは、あまり見いだすことができないであろう。
本図には足利三代将軍義満の鑑蔵印「天山」が押され、彼がせきばらいをしながら鑑賞していた息吹を感じさせる。そして寛文十二年(一六七二)遠州掛川の太田資宗から、久遠寺に寄贈されたことが箱の蓋裏に記されて三百年を保有、その作画より約八百六十年の長い命を伝えていることがわかる。
| 備考 | 国宝・国指定重要文化財 「絵画」 久遠寺 昭和三十年六月二十二日 国指定 | ||
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