第三章 結び

 これまで述べてきたことは、本町将来の展望というより、むしろ町勢の振興の方向とでもいうべきものであって、このような産業開発を強力に押し進めていけば、現在、国民1人当りの所得に対して20パーセント以上の格差のある町民所得も、やがてはこれと同一レベルとなり、経済的には真に豊かな町になるであろう。
 しかし、将来の本町が経済的にいかに豊かな町になっても、「人間はパンのみにて生きるものにあらず」、という諺(ことわざ)によってわかるとおり、町民の幸せはそれだけで得られるものではないであろう。
 したがって、真に豊かで住みよい町を建設するためには、このような経済開発とともに、安全で快適な生活環境、充実した社会保障、教育、保健衛生、消費者援助等多くのものの開発、いわゆる社会開発が同時に進められなければならないことはいうまでもない。
 このような地域開発のための基本理念として、昭和38年8月、人口問題審議会はその意見書のなかで、つぎの二つのことを強調している。
(1) 地域開発の理想も福祉国家建設の理想でなければならない。地域開発の主体は人間であり、開発の目的もまた人間であって、地域住民の真の福祉向上が地域開発究極の目的でなければならない。
(2) 地域の発展段階と特性に応じ、経済開発と均衡のとれた社会開発計画を立て、これを強力に実施することが不可欠の条件である。
 さて、この理念を理念として、本町の振興を図るならば、恐らくそう遠い将来でない時点において、そのネームバリューに恥じない、名実共に世に誇ることのできる身延町を築くことができるであろう。