第二節 地形の概要

 本町は西に身延山(1,153メートル)、鷹取山(1,036メートル)、七面山(1,989メートル)さらに八紘嶺といわれる1,500メートル以上の山々がつらなり、早川町や静岡県と境を接しており、東に傾斜はゆるく土地も広く富士川に没している。南は御殿山(783メートル)および安倍峠(1,416メートル)により南部町に接している。それらの支脈の間をぬい、相又川・大城川・身延川・波木井川などの各河川が流れ、富士川にそそいでいる。
 この地域の特色は何といっても断層地形で、断層崖や段丘地形が各所にみられる。下山から奥の院、久遠寺の東をむすぶところに比較的大きい断層線があり、大きな断層崖を富士川に向けている。その下のゆるやかな傾斜の山腹には杉山や塩沢等の部落が存在している。この断層線はさらに南にのび相又川の谷をつくっている。
 相又川は谷が最も長く、断層崖もみられる。また段丘もみられ、その上に耕地や集落が発達しており、さらに南下し、榧の木トンネル付近で南西に向きをかえているが断層谷の様相を呈している。
 大城川にも随所に段丘地形がみられ、流路を南西方面にとり、相又川と合している。
 身延川、波木井川は北に山を負い地域的には暖かいところであり、植物の分布の点からみて暖地性の植物の北限のものが多い。
 富士川東部は、五宗山や三石山を一連とする毛無山系の山地が地塊的に分立し、富士川沿岸に急斜面をむけ、急峻な山地が多く、岩石が露出しており、わずかに一部、山地のふところの傾斜地に集落が点在しているのみで土地もせまい。
 東西方向に流路をとる御持川、桑柄沢をはじめ大小多くの河川により、これらの地層は解析され、富士川にそそいでいるが、起伏のはげしい地形である。
 中央部を富士川が南北方向に流路をとり、随所に河岸段丘が見られ、耕地や集落として発達し人口密度も高く、国道52号線や国鉄身延線などの交通網も発達し、産業、文化の中枢となっている。この身延山を中心とした概況を身延山御書類聚、妙法尼御前御書には
「北は身延山と申して天にはしだて、南は鷹取と申して鶏足山の如し。西はなないたがれと申して鉄門に似たり。東は天子がたけと申して富士の御山にたいしたり。四の山は屏風の如し。北に大河あり早河と名く。早き事箭を射るが如し。南に河あり、波木井河を名く。大石を木葉の如く流す。東に富士河、北より南へ流れたり。千の鉾をつくが如し。内に滝あり身延の滝と申す。白布を天より引くが如し。……」
とのべている。
 耕地は標高150メートル付近にひらけ、水田は各河川の扇状地および富士川の流域の周辺に点在している。畑は傾斜をなしていて、山林につらなっている。