第二章 気象

第一節 気象の概況

 本県の南端に位する身延町は、本県における温暖多雨区の南部町に次ぎ温暖で雨量も多い。いま気温と降水量について、県下各地と比較してみると表1のようになる。

  表1  各地の平均気温と降水量   (明治34〜昭和25年)  山梨県気象年報
      月
観測所
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
全年
身 延
3.5
3.4
7.9
13.0
17.4
21.8
25.9
26.6
23.1
16.7
11.3
5.7
14.7
58
63
106
158
124
275
170
244
236
307
138
65
1,944
南 部
3.7
4.5
8.0
13.4
17.6
21.5
25.4
26.0
22.9
16.9
11.4
6.0
14.8
78
98
106
212
196
218
278
329
397
263
129
92
2,519
鰍 沢
2.0
3.2
7.3
13.3
17.5
21.7
25.8
26.5
22.6
16.1
9.8
4.3
14.2
45
68
102
114
113
163
170
199
234
177
88
57
1,530
甲 府
2.0
3.2
7.2
13.2
17.4
21.8
26.1
26.6
22.7
16.0
10.2
4.5
14.2
37
51
77
83
92
136
137
175
198
138
69
46
1,239
韮 崎
1.7
2.8
6.6
12.8
17.0
21.1
25.4
26.1
22.0
15.8
9.5
4.1
13.7
39
53
77
95
98
146
145
155
195
142
66
46
1,257
小淵沢
-0.7
-0.4
3.4
9.1
14.1
17.9
22.2
22.6
18.8
12.5
7.4
1.7
10.7
39
50
77
99
107
174
146
133
187
134
69
43
1,258
日下部
1.8
2.8
6.8
12.9
17.1
21.5
25.5
25.8
22.2
15.6
9.6
4.2
13.8
34
48
69
80
91
140
151
171
185
133
64
42
1,208
大 月
2.4
3.3
5.3
12.3
16.5
20.0
24.7
25.3
21.9
15.0
9.7
5.0
13.5
30
57
56
91
105
236
203
216
203
255
91
54
1,597
山 中
-2.7
-2.5
1.6
7.6
11.8
16.1
20.0
20.3
17.1
11.3
5.9
0.4
8.9
68
107
164
191
181
273
254
326
368
308
156
89
2,485

 まず、年平均気温についてみると、山中より5.8度高く、小淵沢よりも4.0度高いが、甲府と比較してみると意外にも0.5度高いだけである。これは大陸性気候のため夏期に盆地の気温が急上昇し、峡南地区よりもかえって高温となるためであり、身延町の年平均14.7度という数字は、主として冬期の温暖によるところが大きい。
 次に、降水量についてみると、年間1,944ミリを記録し、山中、南部に次いで3位となっている。表2のクライモグラフは身延と甲府の気候を対比したものであるが、甲府が内陸性の特色をもつ、いわゆる中央高地式の型であるのに対して、身延は海岸気候にやや近い特色を示している。
 次に、身延が県下気候区分の中で、どのような位置をしめしているかを、県下全体との関連において眺めてみよう。県下の気候区分は、気候を決定する2大要素である気温と、降水量から考察して、次の六区分に分けられる。
1、 温暖多雨区−年平均気温14度以上で年間の降水量は2,000ミリをこえて、湿度が高く、気候温和で積雪は、年数回、海岸的気候に近い地区。
2、 温暖中雨区−年平均気温12度〜14度で、降水年量1,400〜2,000ミリで多分に内陸的気候の地区。
3、 温暖小雨区−年平均気温12度〜14度で気温較差が大きく、降水年量は1,400ミリ以下で、非常に乾燥し内陸性気候の典型的地区。
4、 寒冷多雨区−年平均気温11度以下で、1月2月の平均気温は零度以下となり、降水年量2,000ミリを突破する地区。
5、 寒冷中雨区−年平均気温12度以下で、年降水量1,400〜2,000ミリの地区。
6、 寒冷小雨区−年平均気温12度以下で、1月2月の平均気温は、いずれも零度以下となり、年降水量は1,300ミリ前後で非常に乾燥する地区。
 いまこの区分に従って、県下を区分してみると、図1のようになり、身延町は概ね久那土〜五開を結ぶ線以南の温暖多雨区の中ほどに位置している。