第二節 身延町周辺の動物

 地域の地勢や、気候風土の変化は、植物分布の状況を千態万様ならしめているのでこれら植物の実、また、それに寄食する昆虫等の好が随所に求められるのはもちろん、鳥類における営巣の適地、構巣の材料、獣類の棲(す)む適地、洞窟(どうくつ)等が容易に求められる。地域の自然と、つねに深い相互関連をもって分布するものである。
 身延は全面積の82パーセント余りが林野で占められその深く刻まれた大小無数の渓谷があり、低地の暖帯性から、亜高山帯までの間に感受性の鋭敏な動物が特有の適応性を発揮し、多種類の動物が自然的要素と平衡を保持しながら生息(せいそく)、又は渡来して繁殖している。

一、鳥類

(一)夏鳥
 春季南方より渡来し春より夏にかけて繁殖をすませて、秋季暖地に去るものは、ツバメをはじめとしホトトギス、アカショウビン、ブッポウソウ、カッコー、ジュウイチ、ツツドリ、サンコウチョウ、ヨタカ、コムクドリなどである。
 身延町は、ブッポウソウ(仏法僧)渡来生息地として、全国3ヵ所と共に、天然記念物に指定された、全国的に著名な繁殖地である。
 ブッポウソウは、「ブッポウソウ」と、鳴かず、ただゲゲとかギャギャと鳴き、「ブッポウソウ」と鳴く鳥はコノハズクであり、ブッポウソウはわが国に渡来する夏鳥中美麗な点において、優位を占めており、渡来数が極めて少なく、カナブン・コガネムシ・タマムシ・ハンノキハムシ等の害虫を捕食する有益鳥である。
(二)留鳥
 周年同一地域に生息し、季節的移動をしないものでキジ・ヤマドリ・スズメ・カラス・カワセミ等である。キジは年々減少し、現在3ヵ年を限度とし一切の狩猟を禁止する休猟区が町内に逐次設定され、休猟区内にはキジを放鳥し保護と増殖につとめている。
 キジは、昭和22年に日本鳥類学会より国鳥に指定された。
(三)冬鳥
 北海道・千島・シベリア等の北方寒冷の地で繁殖し越冬のため秋季に渡来し、春季北方に去るものでガン・カモ・ツグミ・オシドリ・ジョウビタキ・クイナ・ウズラ等がある。
(四)漂鳥
 繁殖地と越冬地を異にする鳥、たとえば高山・深山に繁殖し、冬を村落地方に過す、ウグイス・ミソサザイ・ルリビタキ・カケス・コノハズク・シジュウカラ・ヒバリ・ヒヨドリ・フクロウ・モズ・トビ・クマタカ・ヤマガラ・アカケラ類等本地域に出現する漂鳥は、51種に及んでいる。
(五)旅鳥
 本邦遙(はる)か、以北で繁殖し、赤道直下若しくは以南の南半球で越冬するため秋は南に、春は北に本地域を通過するシギ・チドリの類コムシクイ・ムギマキ等で本地域の旅鳥は6種である。