第二節 税制と税収

一、現行税制の沿革

 明治6年(1873)の地租改正以来地方税制の歴史は今日に及んでいるが、近年では大正15年(1926)および昭和15年(1940)に大きな改正が行なわれ、昭和25年に行なわれたシャウプ勧告による国税・地方税体系が根本となっている。その後も度々改正が行なわれているが、なかんずく29年の改正は相当大幅であって、付加価値税の廃止・入湯税の国税移管・たばこ消費税の創設等がある。その後も毎年度のように改正が行なわれたが、その趣旨は、
1 負担不均衡の是正ならびに、国民負担軽減のための減税
2 地方財源充足のための地方税の増加
3 国税、所得税改正の影響を防ぐための住民税の変更
4 さらに37年度に国、地方の税源配分の一環として、県民税所得割の改正
等である。
(一)住民税
 明治の初頭以来、戸数割と名付ける人頭税的色彩を加味した所得税が町村税の中心をなしており、また明治21年(1888)、所得税が国税として創設されて以来、地方に付加税の徴収を認めていた。昭和15年(1940)の改正に際し、物税本位とするたてまえからと、その負担が余りにも不均衡であった点を考えて廃止され、ただ負担分任の精神を表現し得る税目を地方税に残しておく趣旨により、きわめて低額の、むしろ人頭割的町村民税を設けたのであり、その後地方財源の窮乏とともに、収入を目的とするようになり、シャウプ勧告で25年から町村民税だけとし、税額は大幅に増加され、見方によれば所得税の付加税的なものとなった。
 その後、29年に県民税ができ、37年に比例税率に改め、かなりの増額となり、県民税と町村民税を総称して「住民税」とした。国税の所得税における前年の所得を算定の基礎として、各種の控除も国税と同じく基礎控除・扶養控除・生命保険控除・社会保険控除を行ない特に町村住民に広く浅くということが適当であるので、特別のものを除き、低い控除額と税率を適用している。43年度の所得割の免税点は28万円である。
(二)固定資産税
 土地、家屋、ことに土地に対する課税はきわめて古くからあった。経済の主力が農業であった時代は、土地は最も有力な生産源であり、応能的見地からしても最も適当な課税と考えられていた。
 明治維新後地租は国税の中心となり、その9割を占めていたが、地方もまたこれに大きな付加税を課していた。
 家屋に対しても、やはり明治15年(1882)以来地方税として重要な財源となっていた。地方税を物税本位にするという方針に立った昭和15年以来実質的には、地租家屋税とも全額が地方税となり、ますますその重要度を高めたが、課税標準たる賃貸価格の据え置きのため、その負担は軽くなり、税の占める比率が低下した。
 シャウプ勧告による25年の税制で、これを大体3倍程度に引き上げ、償却資産をも含めて固定資産税とした。地租については、古くは地価がとられていたが、大正15年の税制改正に際して賃貸価格に改め、昭和6年に実施された。家屋については、明治以来戸数割算定の中に織りこまれ、独立税になってはいなかったが、大正15年の改正で府県税として家屋税が創設され、賃貸価格を定めてこれに一定の税率を乗じて課税するようになった。土地、家屋の評価はそれぞれ10年および5年ごとに再評価した。
 昭和25年の地方税法では土地、家屋とも時価評価とすることに改められ、毎年評価し直すことになったが、その後経済状況もある程度安定したし、毎年度行なうことは課税事務の複雑を招くので、昭和30年の改正で、土地、家屋についての評価替えは三年ごとに行なうことになった。評価方法としては
1 宅地は取引価格
2 農地は収益還元価格
3 家屋は再取得価格
4 償却資産は取得価格
 を基本とすることになっている。しかしその後、不動産の値上りに評価がついて行けないということから、非常に乱れ、激増緩和の措置もとられた。
 賃倍方式の採用 昭和30年〜39年までの土地の評価に使用した賃倍方式・39年度の改定期に全資産の評価を統一し、時価評価として一斉評価替えを行なった。漸時評価を上げて、土地等についての騰貴を税の上では引上げを抑制する方法をとったが、現実には税の負担額が問題となっている。免税点は土地8万円、家屋5万円である。
 表1 土地に対する賃貸価格の倍率表
  地区
地目
下山 身延 豊岡 大河内
 1,760倍  2,194倍  1,815倍  1,520倍
 1,760  2,618  2,167  1,520
宅地  1,430  1,716  1,408  1,180
山林  3,740  3,762  3,726  2,500
原野  3,740  3,762  3,726  2,500
雑地         900
  固定資産税率の特例による引上げ
 固定資産税の標準税率は評価額の100分の1.4となっており、地方税法第350条で特例として100分の2.1まで引き上げることが認められている。本町においてはこの条項を適用して、昭和37年(中央公民館の建設財源として)、41年(下山中学校屋内体操場建設の財源として)、昭和43年(大河内中学校屋内体操場建設の財源として)、昭和44年(下山地区公民館および町の塵芥焼却場建設の財源として)の各年度にそれぞれ100分の1.7の超過税率を適用し増収をはかっている。
 国有資産等所在地市町村交付金および納付金制度
 昭和31年度から国有資産等所在市町村交付金および納付金制度ができ、収益的事業を行なっている国又は他の地方団体の固定資産については交付金を、国鉄・専売公社・電信電話公社等の資産については納付金として、所在市町村に納入されている。
 本町における最近3年間の状況は次の通りである。
年 度 交付金 納付金
昭和42年度(決算金)  135,920円  6,502,888円
昭和43年度(決算金)  183,560  6,920,740
昭和44年度(予算額)  179,000  7,569,000

三、たばこ消費税

 明治以来消費税があり、明治31年に専売制が実施せられたが、全額国庫収入となっていた。29年に地方の独立財源を増強するために、町たばこ消費税が設けられ、初めは町内で小売された価格が課税標準であったが、37年度の改正により全国平均の単価を定め、小売された本数を乗じたものによることにして、都会と地方の格差の是正につとめ現在重要な財源として毎年税率の引き上げが行なわれてきた。

四、軽自動車税

 自転車税、荷車税は古くからあった。道路損傷負担的な意味も含まれた税であり、大衆課税として面白くないといわれてきたが、ようやく昭和33年度に廃止され、代って軽自動車税ができた。道路運送車輛法にいう原動機付自転車・二輪小型自動車・軽自動車に課税されている。これらは年々増加を示している。(表3参照)

五、電気ガス税

 電気およびガスの消費に対する消費税である。昭和17年に国税として設けられ、戦後21年9月廃止され、23年に復活したのである。料金を課税標準とし、供給者を特別徴収義務者として納付させており、零細負担の排除の趣旨から一定額以下は免税の措置がとられている。

六、木材引取税

 素材の引取に対して、価格を標準として引取者に課しており、近時は戦後の復興のため木材が過伐されて出材が減り、他面課税対象の捕捉が困難で増収に薄い税である。

七、入湯税

 目的税として、環境衛生施設その他観光施設の整備に要する費用にあてるため、入湯客1人1日について20円を標準として徴収する。

 表2 業種別所得割納税者一覧表
   年度
区分
34 35 36 37 38 39 40 41 42 43
給与所得者
818
922 913 818 770 1,718 1,826 1,720 1,850 2,207
営業所得者 229 225 276 282 202 368 382 598 580 422
農業所得者 190 200 227 247 561 191 92 65 67 56
その他の事業所得者 362 317 361 474 575 9 19 13 14 18
その他の所得者 52 54 82 59 5 19 26 15 25

表3 年度別軽自動車数表 
   年度
区分
33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43






総排気量が0.05リットル以下又は
定格出力0.6KW以下
4 4 70 216 374 507 621 621 774 869 963台
総排気量が0.05リットルをこえて
0.09リットル以下又は定格出力が
0.6KWをこえ0.8KW以下
3 4 8 7 21 56 97 130 165 217 253
排総気量が0.09リットルをこえ又
は、定格出力が0.8KWをこえる
もの
68 101 154 183 233 222 230 231 208 220 236
小計                   1,306 1,452

二輪車 64 62 77 84 103 82 76 67 53 58 62
三輪車       20 16 22 23 22 27 18 20
四輪乗用車         11 9 14 16 31 31 52
四輪貨物車         25 26 50 85 102 157 207
農耕用     32 50 34 33 34 50 68 69 73
特殊作業用                     0
小計                   333 414
二輪の小型自動車 5           2        
合計 144 171 341 560 817 957 1,147 1,222 1,428 1,639 1,866

表4 年度別税目別実収一覧表 (単位円)
 区分
年度
町民税 固定資産税 軽自動車税 電気ガス税 たばこ消費税 木材引取税 入湯税
30 4,734,026 24,429,568   1,907,574 4,835,230 1,038,800  
31 5,880,865 28,220,012   1,986,558 6,737,600 573,350  
32 6,729,192 31,107,596   1,973,106 6,048,020 1,857,998  
33 6,429,447 29,977,843 135,850 2,110,342 7,027,280 288,060  
34 6,924,585 28,624,262 223,180 2,112,547 6,747,400 985,517  
35 8,564,921 31,181,938 366,730 2,598,771 7,869,190 2,000,807  
36 9,176,518 28,898,307 535,430 2,564,769 8,782,310 1,077,000 8,200
37 9,955,232 32,360,765 759,670 3,039,944 9,737,780 288,380 7,380
38 10,237,978 36,400,220 812,590 3,578,581 11,158,540 534,170 5,980
39 11,583,087 30,091,560 936,310 2,814,561 13,570,370 208,070 7,500
40 11,983,405 32,616,610 1,232,310 2,524,906 17,240,390 387,630 9,520
41 13,152,794 39,464,237 1,307,150 3,544,808 19,402,170 441,491 3,200
42 15,987,480 36,972,430 1,657,900 4,340,721 24,849,830 340,610 4,360
43 17,331,594 49,177,090 1,840,550 4,917,977 23,001,800 256,767 8,020

表5 年度別納税義務者数
  区分
年度
個人町民税 法人町民税 固定資産税
均等割 所得税 均等割 所得税
32 3,778 3,826 52 5 3,519
33 3,778 1,559 52 34 3,544
34 3,766 1,609 52 52 2,906
35 3,722 1,746 52 52 2,911
36 3,586 1,888 50 32 2,934
37 3,834 1,903 53 39 3,028
38 3,727 2,167 63 49 3,041
39 3,629 2,291 62 45 2,238
40 3,398 2,338 75 50 2,694
41 3,404 2,422 81 61 1,698
42 3,432 2,526 78 63 1,795
43 3,407 2,728 83 65 1,937

表6 土地の昭和42年度分の評価額等に関する調
  区分
地目
地積 評価額 課税標準額 固定資産税額
100/1.4
k㎡
1,886

(1,902)
千円
80,957
千円
70,149
千円
982
2,588 (2,610) 36,701 21,881 306
宅地
744,659
(225,259) 223,188 54,752 767
塩田          
山林 25,719 25,932 107,159 59,189 829
原野 1,719 1,733 7,115 3,389 47
雑種地 73 74 2,373 1,563 22
32,729 33,002 457,493 210,923 2,953

表7 家屋の昭和42年度の評価額に関する調
区分 床面積 評価額 課税標準額 固定資産税額
100/1.4
木造家屋 (58,690坪)
194,017㎡
千円
273,053
千円
273,053
千円
3,823
非木造家屋 (3,315坪)
10,958㎡
141,937 141,937 1,987
(62,005坪)
204,975㎡
414,990 414,990 5,810

表8 土地の昭和43年度分の評価額等に関する調
  区分
地目
地積 評価額 課税標準額 固定資産税額
100/1.4
k㎡
1,882

(1,898)
千円
83,348
千円
70,011
千円
980
k㎡
2,583

(2,605)
36,634 21,845 306
宅地
745,213

(225,426)
223,324 63,894 895
山林 k㎡
25,718

(25,932)
107,158 63,326 887
原野 k㎡
1,721

(1,735)
7,123 3,649 51
雑種地 k㎡
73

(77)
2,387 1,712 24
k㎡
32,725

(32,998)
459,974 224,437 3,142

表9 家屋の昭和43年度の評価額に関する調
区分 床面積 評価額 課税標準額 固定資産税額
100/1.4
木造家屋 (58,458坪)
193,250㎡
千円
295,098
千円
295,098
千円
4,131
非木造家屋 (3,400坪)
11,240㎡
145,763 145,763 2,041
(61,858坪)
204,490㎡
440,861 440,861 6,172

表10  課税標準額段階別所得割額および納税義務者調
 区分
 
年度
5万円以
下の金額
5万円〜
10万円
10万円〜
20万円
20万円〜
30万円
30万円〜
50万円
50万円〜
100万円
100万円〜
150万円
150万以上
人員 標準額 人員 標準額 人員 標準額 人員 標準額 人員 標準額 人員 標準額 人員 標準額 人員 標準額
  千円 千円 千円 千円 千円 千円 千円 千円
34 446 13,703 530 36,951 376 54,755 160 39,241 87 33,460 10 4,836        
35 483 17,813 575 48,036 407 65,706 173 47,089 94 36,806 14 5,319        
36 422 13,550 575 42,932 492 65,066 202 52,349 157 50,506 34 17,014 6 7,060    
37 367 11,806 485 35,661 535 72,859 264 63,308 178 64,654 66 40,652 7 7,399 1 2,812
38 170 6,515 485 36,559 888 135,887 316 77,599 222 81,657 79 50,900 6 7,723 1 1,925
39 738 19,488 608 44,388 488 65,570 229 58,396 149 54,032 72 47,828 7 11,062    
  5万円以
下の金額
5万円〜
10万円
10万円〜
15万円
15万円〜
40万円
40万円〜
70万円
70万円〜
100万円
100万円〜
150万円
150万以上
40 732 18,722 596 46,835 347 41,622 420 81,419 161 64,398 69 43,699 9 11,325 4 8,984
41 591 15,292 569 41,141 474 58,475 626 148,921 116 59,581 33 27,223 10 14,414 3 5,485
42 662 16,827 557 40,622 450 56,609 704 164,337 141 72,554 39 34,790 9 10,863 4 7,875
43 786 18,904 604 44,281 476 57,462 555 145,006 163 84,792 39 32,172 10 11,669 5 9,285

一、町内納税組合の概況

 身延町における納税組合は、明治の晩年から大正年間に設立され、国税県税の納入をも扱ってきた法定組合と、町税を取扱う任意組合とに区分されるが、法定の組合はわずかで身延駅前・梅平・門内地区の商店街に設立されている。
 これらの法定組合の先導的な影響と各町村の設立促進によって、逐年多くの組合が設立され、とくに昭和22年地方自治法制定以降においては、各町村とも徴税の効率を考え積極的に設立したので、町村合併時の昭和30年には旧四町村ともほとんどの部落に納税組合が設立されるようになった。
 町村合併以降においては、旧村時代の滞納の整理と徴税の高率収納を図るため、さらに設立・運営・指導と未加入者の加入をおし進めたので、現在は町内全区に組合が設立され、その数は191組合となった。(下山41、身延61、豊岡40、大河内49)納税組合が取扱う町税は、町県民税・固定資産税・軽自動車税が主なものであり、取扱い金額は昭和34年度743万9千円、10年後の昭和43年度には1,847万1千円になっている。昭和43年度現年分の全町税(県民税を含む)1億273万5千円に対する組合扱いの割合は18パーセントであるが、町税の中のたばこ消費税(2,300万2千円)、電気ガス税(491万8千円)、給与所得者の特別徴収分(1,097万4千円)、軽金、東電の大規模償却資産税(1,961万1千円)三公社・政府機関等の交付金、納付金(705万5千円)、その他法人関係分などを除く個人納税分2,151万4千円に対しては86パーセントを取り扱うことになり、しかも組合扱い分については、ほとんど100パーセントの収納をみており、町の行財政に大きな貢献をしている。納税組合に対する報償として、町は昭和35年度までは取扱い金額の100分の6、昭和36年度から100分の3を支給して現在に至っている。組合長には昭和43年度より1人につき2,000円と、組合員数に50円を乗じた合算額を組合長手当として支給している。
 優良組合・組合長の表彰は、国・県より表彰をうけた者もあり、町でも行なっている。191人の組合長の中には勤続20年以上が21人、10年以上が30人もあり、多年の功労を謝す意味で永年勤続者と、優良組合に対する表彰が昭和42年度より毎年行なわれることになり、昭和42年度に8組合長・2組合、43年度に21組合長・6組合を表彰している。なお、納税組合ではないが国民健康保険税の集金を、町婦人会48支部が支部長を責任者として取扱いをしており、2,200万円に近い保険税を95パーセント以上の優秀な成績で収納している。