第六節 社会教育一、社会教育の概況明治5年にしかれた学制により、学校教育は日進月歩の勢いで進歩していった。社会教育は学校教育よりやや遅れたが、通俗教育とよばれようやくその緒についた。大正年代に入り社会教育とよばれるようになり、昭和に入り次第に活発になっていったがやがて第二次世界大戦となり、国の行政機構はすべて決戦体制に切り替えられ、社会教育も実質的にはまったく停止し、やがて敗戦とともにその姿を消してしまった。 敗戦後社会教育はいち早く再開されたが、昭和24年社会教育法制定により、法の裏付けを得て社会教育運営上甚だ強い推進力となった。当時の豊岡村では早くも昭和25年に公民館を設置した。下山村では昭和27年に公民館を設置し、翌28年には運営よろしきを認められ、準優良公民館として県教育委員会から表彰された。身延町・大河内村でもこれと前後していずれも公民館を設置してそれぞれ活動を開始している。 昭和30年には、身延町外三ヵ村が合併して身延町となった。合併後の社会教育はしばらくは遅々としていたが、その後社会教育に関する条例や規則が制定され、これに従事する人的条件も次第に整備され、また町民の自覚により公民館を中心に活況を呈するに至った。 現在町内には中央公民館1館・地区公民館4館・部落公民館36館があり、それぞれ町・地区・部落の文化センターとしての役割りを果たしている。公民館も合併当時は既設建物を利用していたが、昭和40年から年次計画により、次第に改築・新築され漸次面目を一新しつつある現状である。なお身延公民館に併設の町立身延図書館がある。 社会体育施設としては各地区に屋内運動場・プール等が設置され、体育指導員の指導により、各地区とも社会体育についても近時著しい進展を見せている。 一方社会教育関係団体として身延町体育協会・身延町文化協会・身延町婦人会・各小中学校PTA等をはじめ、数々の団体がありそれぞれ独自の活動を展開している。 本町は土地がら史跡・名勝・天然記念物・美術工芸品が多く、また古来より文人墨客の来訪もあり各種文化財に富んでいる。この方面の調査・研究も文化財審議会を中心に、町誌編さんを機会に幅広く進んでいる。 すでに町章・町の花・町の歌も制定された。今後の問題として県立図書館分館誘置・中央公民館・文化会館・青少年の家の設置、各種社会教育施設の設備の充実、社会教育関係団体の自主的活動等により、最近著しい進歩を示している本町の社会教育を、さらに大きく発展向上させて行きたいものである。 なお昭和44年度の社会教育関係予算は次の通りである。
二、社会教育の意義社会教育は地域社会、職域社会等、社会環境を背景として行なわれる教育であって、学校教育の法制に基づいて、学校で行なわれる教育以外の、主として成人に対して行なわれる、すべての組織的教育活動をいうものと定義してよいであろう。ある人はこれを「社会が社会によって、社会を教育する所の教育」であると定義しているが、要するに社会という人の結合・集団・相互関係を背景とする相互教育であり、諸種の施設や機関を、自由に選択利用して行なう国民の自己教育であり、また社会環境の中から、自ら抽出される環境教育であり、また生涯教育でもある。 教育基本法の第2条は、教育の目的が「あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない」として、教育が学校教育以外の分野に広く、その内包外延を持つべきことを示唆しているが、実に社会教育は、その内容も、主体対象も、手段方法も複雑多岐にわたり、不特定広汎(はん)であり、融通性機動性に富み、学校教育のように組織的形式的でなく、固定的閉鎖的でないことを特徴としている。まずその内容としては、政治・経済・宗教・文化・産業・科学等各般にわたっている。その主体は、いわゆる教育者のみならずむしろ実社会生活に活動する、農工商業者・芸術家・文化人・思想家・宗教家等すべての社会人がこれを担当すべきであり、その対象は、一般成人の中でも婦人層・青年層・労働者層高齢者層等に重点がそそがれ、また学童生徒も校外生活においては、社会教育の対象となり、幼児は、家庭教育の主たる対象とされている。 社会教育の手段方法に至っては、講義によるもの、視聴覚器材を利用する方法、その他あらゆる図書や文化財を活用し、文化機関が側面的に協力するものなどがあげられる。 社会教育施設としては図書館・博物館・公民館の外、学校施設もまた社会教育に利用され、その他あらゆる教育施設は、すべてに同時に社会教育施設としての役割りを果たしつつある。社会教育の具体的形態を大別すると、かつては、学校を媒介とするものを第1としたが、次第に図書館・博物館・公民館を中心とするものになって来た。 特に公民館は戦後あらたな構想のもとに、郷土的色彩と、民主的組織とを総合的な方法で取り入れて運営する文化施設として、重要なる社会教育の場である。 また各種の、自主的な民主団体組織の運営を通じて行なわれる教育形態もある。 次に社会教育の方法として、 第1は講義の様式から討論の形式へ、第2は解説の方法から視聴覚教具利用へ、第3は指導的方法から助言的方法へ、第4はレクリエーションによる相互教育への4つが新しい傾向としてあげられ注目されている。 |