第三節 家庭教育の振興

一、家庭教育学級

 昭和44年度 下山地区家庭教育学級学習計画
月日   学習課題 時間 学習方法   講師助言者   備考
8月
2日
  開講式 運営協議
(家庭教育の意義とあり方)
家庭の役割
    講義と
話し合い
  下山公民館長
望月諦三
   
8月
30日
  (乳幼児の衛生面)
子どもの健康を保つには
病気の場合の手当
    講義と
話し合い
  下山療院医師
望月惟臣
   
9月
28日
  (家庭内の人間関係)
明るい家庭生活をおくるに
は人間関係はどうしたらよいか
    講義と
話し合い
  県指導主事
石川源朗
   
10月
30日
  (薬の知識と用法)
乳幼児に与える常備薬
薬の与え方
    講義と
話し合い
  薬剤師
依田光弥
   
11月
16日
  (子どもの成長と親の責任態度)のびのびとしてねばり強い子ども家庭や地域社会のよい伝統をうけつがせる     講義と
話し合い
  県社教主事
矢崎聡司
   
12月
14日
  (子どもの情操教育)
豊かな人間を育てる為には家庭での道徳、心情豊かな個性の育成をいかにしたらよいか
    講義と
話し合い
  元校長
望月豊子
   
1月
21日
  (家庭と学校との結びつき)
家庭と学校との生活を通して人づくりがなされているか、真の結びつきはどのようにあるのが望ましいか
    講義と
話し合い
  下山小学校長
望月二三男
   
2月
22日
  (栄養と健康保健所行政)
乳養児に与える栄養食一般家庭と保健所との関係
    講義と
話し合い
  身延保健所衛
生課長
野沢豊
栄養士
秋山智恵子
   
3月
14日
  閉講式
家庭教育の反省
    講義と
話し合い
  下山保育園長
秋山智孝
下山公民館長
望月諦三
   
 昭和44年度 身延地区家庭教育学級学習計画
月日   学習課題 時間 学習方法   講師助言者   備考
9月
21日
  開講式 運営協議
幼児期におけるしつけの問題 子どもは何を求めているか 脳の発育としつけ
      講義と
話し合い
  身延小学校教頭
千頭和貞子
  テキスト

家庭教育
10月
25日
  家庭と経済
人口問題(子どもの数)
家庭経済と教育費の関係
      講義と
話し合い
  身延山大学教授
堀一勇
  家庭教育
11月
22日
  家庭のしつけと集団のしつけ 集団生活と家庭環境 親の役割と責任       問題提起と
話し合い
  身延中学校長
井上熊雄
  家庭教育
12月
13日
  保育園と家庭保育の関連
保育内容の理解 保育園児と家庭での子ども 家庭と園との考え方
      問題提起と
話し合い
  大野山保育園保母   家庭教育
1月
24日
  幼児の健康管理について
事故の手当 幼児期の病気
食生活と身体の問題
      講義と
話し合い
  身延保健所長
田中孝治
保健婦
野村典子
  家庭教育
2月
21日
  よい習慣の形成について
生活のリズム 睡眠の環境 身体の保護と訓練 食事のしつけ 過保護について
      講義と
話し合い
  大野山保育園長
沢村清一
  家庭教育
3月
7日
  小学校と保育園との関連 入学前に家庭で教えること
入学児童家庭に望むもの
閉講式
 諸反省
      講義と
話し合い
  身延小学校長
依田金晴
  家庭教育
 昭和44年度 豊岡地区家庭教育学級学習計画
月日   学習課題 時間 学習方法   講師助言者   備考
8月
23日
  開講式 運営協議
親の教育上の責任と役割
      講義と
話し合い
  身延山短大教授
堀一勇
   
9月
20日
  子どもの進路指導
進路指導と親の心構え
子どもの進路と家庭の職業
職業と適性
      講義と
話し合い
  豊岡中学校長
山本恒雄
   
10月
18日
  乳幼児の衛生について
子どもの健康を保つには 病気の場合の応急処置 肥満児対策
      講義と
話し合い
  身延山病院長
中島文夫
   
11月
29日
  子どもの習慣形成 発育段階に応じた生活習慣 しつけの基本 現代生活としつけ       講義と
話し合い
  県社教主事
矢崎聡司
   
12月
20日
  家庭とマスコミ テレビッ子の問題と指導 こどもとマスコミの功罰       講義と
話し合い
  豊岡小学校長
萩原武雄
   
1月
24日
  道徳教育と家庭 さまざまの家族構成や生活条件の中でよい人間性をつちかうには       講義と
話し合い
  大河内中学校長
雨宮正
   
2月
21日
  子どもと読書 読書の必要 本を読む子と読まない子 親と子の20分間読書
閉講式
 諸反省
      講義と
話し合い
  身延町教育委員
鈴木富治
豊岡公民館長
柿島武文
   
 昭和44年度 大河内地区家庭教育学級学習計画
月日   学習課題 時間 学習方法   講師助言者   備考
7月
20日
  開講式 学級の運営について 家庭の機能と教育的役割り 父母 家庭 地域社会 今日の青少年 大学問題
中学生の道徳教育と家庭教育
      講義
話し合い


問題提起
話し合い
  大河内中学校長
雨宮正
大河内中学校教諭
佐野勝
  テキスト
家庭教育
8月
18日
  家庭と学校(その1)
中学生の心とからだ
学校における生徒の生活
家庭で困っていること
      問題提起
話し合い
  大河内中学校教諭
松井竜道
学級生代表

   
9月
20日
  家庭と学校(その2)
親の読書 子の読書
中学生の読書と情態問題点
親の読書をどうすすめるか
      問題提起
話し合い
  大河内中学校教諭
深沢一雄
  生徒の声録音
10月
20日
  重症心身障害児と私の願い       講演会   山梨県重症心身障害児を守る会 会長
戸泉恵美子
   
11月
20日
  家庭と学校(その3)
道徳教育の諸問題 道徳やしつけの上の問題点 家庭の役割 学校の役割 善悪の判断 情操 いとおしい心 ことばづかい 進んで発言する 環境美化 時間を守るなど
      問題提起
話し合い
  帯金小学校長
遠藤治三
大和小学校長
望月照次
大河内中学校教頭
宮沢正成
  テキスト 内田安久著 両親のための中学生のしつけ
12月
10日
  子どもとテレビ
テレビ視聴をどのように高めたらよいか テレビによる学習のしかた
      講義
話し合い
  県社会教育主事
宮沢純太郎
   
1月
20日
  家庭と経済
生活設計のたて方
貯蓄のしかた 買物の工夫
      講義
質疑応答
  日本銀行甲府支店営業課長
新谷勲
  映画とよさんの家計簿・東京の空の下・パンフレット
2月
20日
  閉講式
 皆勤者表彰
 反省会
               

(付・感想文)
  家庭教育学級にまなんで        清 子 遠藤喜代子

 昨年の10月22日に開講されました、豊岡家庭教育学級の学級生として学習を重ねること6回、毎回有意義な3時間の講義を受けた私は、家庭の持つ役割りの重大さをしみじみと感じました。
 まず家庭教育の意義についての学習から、私自身の生活態度や考え方を反省して、子どもの育成につとめてゆきたいと思いました。
 学校教育と家庭とのちがいについては、今まで何気なく子どもを扱って来ましたが、家庭では家庭でなくては遂行することのできない、きめの細かな人格形成という大事な役割りを持つところであって、大きな親の任務があるということに気づきました。
 子どもはつねに親の姿をみつめていて、いつしか親に似た行動をとっているという話を聞きまして、家庭の生活のすべてが教育であることを認識して、責任ある毎日を過してゆきたいと思っております。
 父親から社会性を、母親から情操を汲みとってもらうためには、私は親自身が子どもに期待する人間像を、はっきりとさせることがまず第一だと思います。
 戦後の混とんとした社会もようやく落ち着きをみせて来た今日、現在に生きる子ども達をどのように育てていったらよいだろうかと考えたとき、すっかり自信を失ってしまいましたが、学習を重ねまして大へん得るところがございました。
 石川先生の講義でしたが生活の中に技術を考えようというお話は、私にとってはとても貴重なものでございました。親は子どもを可愛いいのは当然ですから、特に愛情を示すようなことはないが、愛情を理解させる必要はあると思います。
 また大人がすれば早くかつじょうずにできることでも、子どもが独立して仕事や遊びをやりたいという要求を満たしてやること、また子どもの行為や存在を認めてやることなど、家庭でこのような生活様式がすべて満たされているかどうか反省いたしました。
 今後は子どもを立派な一個人として、つねに認めてやりたいと思いました。次に読書のことですが私はさしあたり忙がしい農村生活で、置き去りにされがちな子どもたちのために「子どもとともに読書する20分間運動」を推進してみたいと思っております。
 今回の学級は父親の参加者も大勢で、豊岡の地域に即応した学習が実施され、終始熱心の雰囲気の中で学習し、種々自信を得させていただき極めて有意義なものでありました。

  付 外国人が見た日本の家庭像
(昭和43年12月12日の毎日新聞紙より)

 第四回全国家庭教育研究会第三回のパネルデスカッションで、長い間日本で暮している米・英・独・仏の外人たちが日本のしつけのポイントをつく討論を展開した。
 「日本は子供の楽園といわれるけれど、ほんとうは親は地獄じゃないでしょうか。子供のことをあまり熱心にかまいすぎます。フランスでは母親は子供たちの女中ではないのだから、子供にも家庭の仕事をどんどん手伝わせます。そして小学校にはいるまで小さな動物と同じといって、必要なことは体罰を加えてでも教えます。そのかわり、学校にはいり大人になるにつれて、親は子供の意志を尊重してゆきますが、日本の母親は子供たちに口先でダメというだけでせがままれば何でも許す、ふしぎですね」
 「イギリスにはムチを惜しめばこどもを失うという古いことばがあり、私も食卓マナー、会話のし方、正しいすわり方や、歩き方などきびしくしつけられました。特に重視されたのは会話のし方で、両親の来客に、あいさつして話相手になったり、食卓の会話で自分の考えをはっきり表現することを練習させられました。これは大人になって大変役に立っています。日本のお母さんは教育熱心なのに、このコミュニケーションのしつけだけは忘れていますね」
 「アメリカの家庭では、家族がいっしょに過ごすこと、家族の意志を疎通させること、家族で何かきめるときには、みんなが参加してはっきり考えをのべること、の三つが一番大事だとされています。日本ではどうでしょう」
 「お母さんはむかしより強くなったが、お父さんは下宿人ていどというのが日本の家庭でしょう。そして、お母さんは教育の自信を失って、いうことを聞かないとお父さんにいうよなんて、お父さんをムチ代りに使っています。私はドイツの暖い家庭で、父から家族みんなで遊ぶよろこびや、いたずらのしかたなど、家庭生活の楽しさを十分教わりました。自分が家庭を持つと、このことがどんなに大事かがわかります。日本でも父親は家庭生活に、むかしのように権威一点ばかりでない、楽しい影響力を持たなくてはいけません。私は日本のお父さんを家庭に返せというデモをしようと考えているほどです。日本では、子供のすべての教育を学校にまかせすぎるが、これは大きなまちがいでしょう」
 以上の話を要約すると、「子供の楽園でなく親の地獄」「教育熱心だがしつけ不足」「家庭は家族みんなで動かすもの」「ムチ代わりにされているお父さん」のようになるが参考になることばかりである。