第五節 一般成人教育

 社会教育の中での成人教育は、成人の経済的要求、社会人としての要求、個人的な関心と興味にもとづいて行なわれるもので、その内容は、生活改善・政治・経済・国際的教養・職業技術・保健衛生・レクリエーション・家庭教育・職場教育など多方面にわたっている。
 ここでは、各編の重複をさけ、婦人教育・青年教育・PTA活動等を除き、一般成人教育について述べることにする。
 一般成人教育は、青年教育や婦人教育のような組織体をもたない、対個人教育という対象のためか、青年・婦人教育と比較するとき、はなはだしい立ちおくれを感ずる。
 けれども、最近においては社会・経済・文化のいちじるしい変ぼうに対処する成人の、学習への関心はようやく高まってきたといえる。
 本町における一般成人教育を考えてみても、そこには公民館を開放して行なわれる成人学級、講座と幾多の労苦のあとがみられるが、戦後一貫した教育活動は資料が乏しいので判然としない。
 しかし、地域にあっては、農協を通じまたは養蚕・養豚・養鶏・果樹・酪農等組合をとおして、先進地の視察や、研究会を開催するなど、グループ活動として自主的に学習活動がおこなわれてきている。

 昭和42年度 郷土づくり成人学級学習表   昭和42年8月31日 大河内公民館
月日 学習講題 学習時間
学習方法
利用する教材 講師助言者他
10月14日
(土) 夜
7:00〜10:00
開講式 運営会議
地域開発とわれわれの役割
○戦後わが国経済社会の動き。
○地域開発とはなにか。
○地方自治行政と住民の主導性
○グループ活動の意義と役割
3時間
話し合い
(司会書記を決めて)
掲示
映画
「伸びゆく村」
大河内公民館運営審議会
 委員長
   雨宮正
11月18日
(土) 夜
7:00〜10:00
話し合い学習の種類と実際
○話し合いの意義・種類・開き方・すすめ方
○会議の開き方、すすめ方
○司会、書記について実際
3時間
話し合い
テキスト
録音テープ
テキスト
「上手な話し方」
町教育委員会
 社会教育係長
   田中安春
12月9日
(土) 夜
7:00〜10:00
幸福な生活、部落の近代化
○各自の生活および生活をとりまく環境について話しあう。
○どのような問題があるか原因はなにか。
○隣近所、部落の生活で改めたいことはないか、その原因はなにか。
○解決策について考える。
3時間
六・六式討議
各自生活上の問題点について考えてみて、作文して携行する。 公民館長 
  望月正一
帯金小学校長
  遠藤治三
町教育委員会
  望月重久
主婦
  市川延子
1月10日
(水) 夜
6:00〜8:00
 新年放談会   (会費 300円) 町長・助役・収入役
町教育委員長・町選管委員長・大河内公民館長・主事・同運営審議会委員全員
1月27日
(土) 夜
7:00〜10:00
 家庭生活と経済
○暮しの意味
○生活の科学化・生活改善
○貯蓄
3時間
○問題提起のための講義を講師1人10分間する
パンフレット
インスタント食品見本
大河内中学校PTA会長
  佐野大作
町運転者協会会長
  高見沢一乙
大河内郵便局長
  佐野昭
2月10日
(土) 夜
7:00〜10:00
 選挙と政治・閉講式・反省会
○選挙と金
○公職選挙法改正の諸問題
○明るく正しい選挙
○地方自治と住民の権利
3時間
講義
話し合い
テキスト
テキスト
「青年の父田沢義輔」
録音テープ
町総務課長
  市川充郎
明正選挙推進協議会長
  鈴木正巳

 そのほか、県・郡の主催する公民館大会・社会教育研究大会・先進地視察旅行には積極的に参加し、貴重なる意見発表の機会を得て、本町社会教育は名実ともに成果をあげている。

一、近年における具体例

(一)郷土づくり成人学級(大河内公民館主催)
  1、開設のねらい
 社会・経済・文化の進展に伴い、われわれの生活の中にはいくつかの新しい問題が起ってきている。
 そうした問題を解決して、われわれがお互いの生活を高めて行くにはつまるところ、私たちの郷土をよくしていくことであろうと考えたのである。
 そこで、本年度は郷土づくり成人学級の第一年度として、郷土大河内の次の時代をになう青壮年有志の参集をもとめて、みんなの意見をまとめていくのに必要な話しあい学習の基本的なことや、社会・経済・教育・文化・政治の全般にわたる教育を身につけ、郷土づくりに貢献する人材を養成しようと開設されてきた。
  2、参加対象者
 大河内地区に在住する青壮年(27歳から40歳)で学習意欲のある者約30名を公募する。
  3、学習内容(前頁497、昭和42年度郷土づくり成人学級学習表参照)
(二)身延地区家庭教育学級
  ア、家庭教育学級開設までの経過
  1、開設上の手順
 準備段階は教育委員会事務局でつくった大綱をもとに、県・郡社教主事の指導、助言を受け、さらに社会教育委員会および公民館運営審議会において地域性を考慮した原案を作成した。
  2、家庭教育学級準備会の構成
 公民館長、公民館主事、小、中学校長、小中学校PTA会長、社会教育委員、公民館運営審議会委員、婦人会長、教育委員、社会教育事務担当職員、区長、育成会長、町議会議員
  3、準備委員会の任務
 家庭教育学級の方針にもとづき学級生の把握、部落懇談会の開催、課題の選定、講師、助言者の選定等をなし、開設実施の準備をした。
  4、学級生の募集
 支部PTA役員が中心になり区長、育成会長等協議の上、子どもを持つ両親のうちから出席できる人を男女ほぼ同数(各部落平均6人)人選して報告し、入級については教育委員会より推せん状を送付して入級を勧奨し、さらに「町だより」に掲載して漏れた希望者を勧誘した。
  5、学級生の員数

年齢別 備考
20歳台 0 1 1  
30歳台 9 21 30  
40歳台 18 12 30  
50歳台 4 0 4  
31 34 65  

  イ、学級運営の要員とその組織
  (ア)方針
 家庭教育学級の振興をはかり、青少年の非行化を防止するとともに、男女成人教育の組織化を促進する。
  (イ)目標
 明るい家庭づくりと町づくりの基本的問題の究明
  (ウ)学級役職員

 学級職員
職員名 氏名 職員の役職名
学級主事 田中安春 社会教育係長
助言者 内藤寿々恵 教育委員
遠藤誠 教育長
中里日応 公民館長
望月重久 学校教育係長

 学級運営委員
役職名 氏名 関係役職名
委員長 土橋隆四郎 身延中学校長
副委員長 内藤晴代 身延小PTA副会長
委員 依田金晴 身延小学校長
遠藤亨 身延小PTA会長
鍋島良知 身延小PTA副会長
深沢徹 身延小PTA副会長
望月澄子 身延小PTA副会長
池上正 身延中PTA会長
高村大衛 身延中PTA副会長
田中喜内 身延中PTA副会長
笠原千代 身延中PTA副会長
青沼節代 身延中PTA副会長
日吉松子 身延婦人会長

  (エ)学習展開の実際
  1、目的として次のように考えて実践する。
 両親その他両親に代わる年長者が家庭で子どもの教育をする場合の心構えとか、子どもの扱い方、教育上の留意点を明らかにする。
 そのために
 両親の責任と役割を明らかにしよう。
 みんなで学ぶなかで自分を知ろう。
 親子の話しあいをしよう。
 話しあいを実践にうつそう。
 青少年を病気や事故から守ろう。
 人の子どもも、わが子と同じく世話をやこう。
 時間を守ろう。
  2、学習実践のあゆみ

 学習プログラム
月日 時間 学習課題 学習
時間
学習方法 使用教材 講  師
助言者名
出席者
パーセント
10月28日
(金)
午後
6・30
開講式、運営協議
父親の教育的役割
3 講義と話し合い 録音テープ
親の自信回復
元校長
望月稠春
83
11月25日
(金)
午後
1・00
母親の教育的役割 3 講義と話し合い 録音テープ
親の姿勢
県婦人少年室長
加藤即子
62
12月16日
(金)
午後
6・30
家庭教育の目標 3 講義と話し合い 録音テープ
家庭教育の目標
教育長
遠藤誠
65
1月6日
(金)
午後
1・00
家庭の和 3 講義と話し合い 録音テープ
日本の家庭
身延山短大教授
堀一勇 
45
1月27日
(金)
午後
1・00
勉強しやすい家庭
環境
3 講義と話し合い 録音テープ
家庭での学習
県社教主事
矢崎聡司
46
2月20日
(金)
午後
1・00
青少年の非行対策 3 講義と話し合い 16ミリ映画
ゆがんだ愛
身延山短大教授
長谷川寛慶
42
3月3日
(金)
午後
1・00
年間学習の総まと

閉講式
3 講義と話し合い   社教係長
田中安春
60

  (オ)アンケートによる学級の評価
 収集枚数 52枚 80パーセント

 ① 家の人が開設に理解して参加をすすめた
極上 良好 普通 やや不充分 不充分
22人 16人 12人 1人 1人

 ② 参加の決意(自発的・積極的)
極上 良好 普通 やや不充分 不充分
8人 25人 13人 3人 3人

 ③ 学習内容の事前研究の度合
極上 良好 普通 やや不充分 不充分
1人 12人 37人 11人 1人

 ④ 生活のなかに生かそうと努力するようになった
極上 良好 普通 やや不充分 不充分
13人 27人 12人 0人 0人

 ⑤ 学習方法は
良い 悪い わからない
28人
5人
19人

アンケートからの所見
 積極的な参加の姿勢を最後まで自分のものにしたい。
 学習の成果はなかに生かされているが、自分のもので終りたくない。すこしでも地域に広げていきたい。
 学習課題、学習の方法、その他考慮する点は多々あると思うが学級はみんなで育てていくという基本線にむかって、充分理解し、諸条件を差し操り出席したい。
 出席率平均50パーセントであるが、学級生のなかには精神的にも肉体的にも相当な努力をして参加していることも見逃せなく、大切に育てて行きたい。
 (下山・豊岡地区でも、一般成人教育を実施しているがその具体例は省く。)