第八節 視聴覚教育

一、視聴覚教育の発達

 昭和20年以前には、学校教育、社会教育ともに視聴覚教材の利用については、ほとんどみるべきものはなかったということができよう。従って、本県での視聴覚教材の利用は、戦後新しく登場したといってもよいだろう。すなわち昭和23年、米国の占領政策の一環として行なわれたC—E映画計画に基づき、ナトコ映写機が貸与されたことに始まった。以来20年後の今日、当時を回想するとまことに隔世の感が深い。設備は近代化され、テレビ、ラジオ、各種の映写機、録音機等その他、視聴覚教材は、一般的に各方面に利用され効果をあげている。

二、視聴覚教育の領域

 ポスター、壁新聞・掲示板・紙芝居・写真・演劇・レコード・フイルム・ラジオ・録音機・テレビ等視聴覚教具は、多種多様でそれぞれ特徴をもっている。利用面も、教養に、広報に、レクリエーションに、多岐にわたっているが、各種活動を組写真・幻灯画・映画に自作し、録音機を併用し、抽象的教育活動から、具象性をもった、立体的教育活動へ進めるべきである。

三、社会教育と視聴覚教育

 視聴覚教育というと、社会教育において、特別な教育のような印象が強いが、視聴覚的方法は、社会教育において単独の動きは原則的に考えられない。各種教育活動を、より有効に進めるために、教育計画の中にしん透して、教具の特徴を生かし、対象に応じて適切に提供すべきである。特に組織活動に参加しない大衆の教育には、視聴覚教具の利用は有効な手段である。このためには、技術の一般化が必要で、町村社会教育の関係者は、取り扱いを身につけておく必要がある。視聴覚教育は、施設を離れて、机上の空論ではなり立たない。教材教具を使うところに、教育の重点も生まれ、新しい活用理論が作られてゆくであろう。散発的利用から、計画的利用へ進めるためには、公民館にラジオ、テレビ、映写機、録音機等は最低必需品としてぜひ設備したい。

四、町内公民館の実態

  写真機 映写機 録音機 電蓄 テレビ ラジオ 拡声機
16ミリ 8ミリ スライド
中央 1 1 1   1       1
下山       1 1       1
身延                  
豊岡           1 1 1  
大河内   1     1 1   1  
1 2 1 1 3 2 1 1 2

 町内公民館の実態は、前表のような状況であるが、視聴覚教具は進みゆく社会に対応しての社会教育に、不可欠のものである。各地区館ごとに、不可能の場合は、センターとなる中央公民館に備えておいて、地域内各方面へ自由に流れるような体制を考えたいものである。小中学校児童生徒を対象とするある学者の研究によれば口頭だけの学習指導の場合と、視聴覚教具を利用した学習指導の場合の結果の比較が、次のように示されている。

経過時間
指導の形
3時間後 3日後
口頭だけの場合 70パーセント覚えている 10パーセント覚えていた
教具利用の場合 85パーセント覚えている 65パーセント覚えていた

以上の結果からみても視聴覚教具は、なくてはならぬものであることがわかるので、日進月歩の時代に即応して、社会教育向上のため更に、設備の近代化を図るべきである。