第三節 国庫負担金と保険税

一、国庫負担金

 国民健康保険事業の会計は、町の一般会計から独立して、国民健康保険特別会計により運営され、独立採算制を原則として、被保険者から徴収する保険税と国庫負担金(補助金)を主な財源として、保険給付などの支出をしている。
 国民健康保険は、他の被用者保険(社会保険)にみるような事業主の負担がなく、加入者のうち、所得10万円以下の低所得階層が、全世帯の14.2パーセント(全国)身延8.9パーセントを占めている状況で税負担能力が乏しく、国庫補助をはじめとする大幅な財政援助なしでは運営は困難である。

  表1  年度種類別国庫負担金
種類
年度
療  養
給付費
事務費 調  整
交付金
保健婦 助産費 助  成
交付金
合  計 1世帯当り 1人当り 歳入額に
対する割合
35
2,795,461

833,734

931,000

32,249

0

0

4,592,444

2,717

599

49.33
36 4,585,408 874,987 1,671,000 0 0 371,769 7,503,164 3,201 746 42.00
37 6,716,964 917,000 1,618,000 0 21,333 0 9,273,297 3,728 900 43.10
38 7,884,610 976,927 3,016,000 75,636 58,905 0 12,012,078 3,817 939 36.98
39 8,037,006 1,048,003 2,998,000 109,591 50,168 149,000 12,391,768 4,729 1,184 41.30
40 11,861,697 1,556,810 3,535,000 122,029 61,318 2,037,000 19,173,854 5,845 1,473 35.24
41 19,540,609 1,759,000 1,999,000 130,000 36,000 0 23,464,609 8,176 2,105 38.39
42 20,911,409 1,874,881 2,440,000 142,000 45,000 90,000 25,503,290 11,073 2,923 43.02
43 26,633,322 2,192,000 4,221,000 154,000 44,000 0 33,244,322 21,081 5,248 59.87

 現在、保険会計の主な財源となっている国庫負担の補助金の補助率の引き上げ、あるいは補助金の新設など、改善をはかりながら現在にいたっているが、その主なものは次のとおりである。
(一)事務費負担金
 市町村で行なう国民健康保険の事務に要する経費の全額を、国が負担することになっているが、人口規模、地形的条件などによる限度額が定められている。
(二)療養給付費負担金
 療養に要した費用額に応じ、国が負担するもので、国民皆保険が達成された昭和36年度では、費用額の2割、37年度から2割5分、39年度を初年度とした4ヵ年計画をもって、全員7割給付化が開始されてから、7割給付分に係わるものは4割、昭和43年1月、全市町村全員7割給付が実施されたので、国庫負担率は、療養に要した費用の4割と改正され現在にいたっている。
(三)財政調整交付金
 昭和33年新国民健康保険法が施行された際、新設された補助金で、普通調整交付金と、特別調整交付金にわけられる。普通調整交付金は、市町村の療養の給付及び療養費の支給(保険給付)に要する費用の見込額の100分の5が交付される。しかしこれも、市町村における基準財政収入額、基準財政需要額などを用いた交付方式が定められていて、100分5に達していない現状である。
 特別調整交付金は、さらに低所得者に対する保険税軽減交付金(全額交付)と災害その他特別の事情によるものとにわけられている。
(四)保健婦補助金
 保健婦設置に要する費用の3分の1が交付されるが、限度額が定められている。
(五)助産費補助金
 助産費支給に要した費用額の3分の1が交付される。

二、保険税

(一)課税方法
 従来まで保険料として徴収されていたものが、昭和26年地方税法の改正により、目的税として保険税が賦課徴収されることになった。
 保険税を各世帯に賦課する方法は、地方税法の定めによって、次の3つのうちのいずれか1つを用いてしなければならないが、表2の①の方法を用いる市町村が多く、本町においてもこの方法(四方式といっている)を保険税条例にとり入れて賦課をしている。

  表2  保険税の決め方

所得割総額、資産割総額被保険者均等割総額及び世帯別平等割総額
所得割総額 100分の40
資産割総額 100分の10
被保険者均等割総額 100分の35
世帯別平等割総額 100分の15

所得割総額、被保険者均等割総額及び世帯別平等割総額
所得割総額 100分の50
被保険者均等割総額 100分の35
世帯別平等割総額 100分の15

所得割総額、及び被保険者均等割総額
所得割総額 100分の50
被保険者均等割総額 100分の50

 この方式は、所得割と資産割を応能割(各世帯の税負担能力に応じたもの)均等割と平等割を応益割(それぞれ保険給付がうけられることに応じたもの)とに区分され、表の3つの方法のいずれも、応能、応益は50パーセントずつとされている。
 この四方式によって、各世帯へ保険税を賦課する税率算定は、その年度の運営に必要な目標額を定めて行なわれる。その年度における医療費、事務費その他支払いをすべき経費を推計し、それに見合う国庫負担金、補助金の収入をも推計してその不足分が、保険税としてその年度に必要な目標額となる。したがって、保険給付費(医療費の七割相当と助産、葬祭費など)が、歳出の90パーセントを占める国保会計において、保険税を決定づけるものは、その年度の医療費であるといえる。
(二)保険税の納期および収納
 国民健康保険税は、毎年4月1日を賦課期日として課税され、その後の移動(転出入、社会保険加入脱退、出生死亡など)については月割計算をもって、税額の増減をしているが、納期は昭和42年度より年10回に改められた。第一期分を5月末日として翌年2月末日まで、年10回にわたり収納をしている。
 税金徴収は、婦人会48支部に依頼して行なっているが、役員の熱心な努力と理解によって、昭和42、43年度においては今までになかった好成果を挙げ、3年連続して赤字だった保険会計も、ようやく黒字を生ずることができ、保険財政へ大きな貢献をしている。昭和43年度の収支は約800万円の黒字を残している。
(三)保険税額の推移
 身延町では、年々保険税を増徴しており、とくに41年から42年度へかけての2年間に、72パーセントの増税となり、43年度においても、約15パーセントの増税をして、調定額22,198,000円となるなど、ここ三ヵ年で税額が倍増になっている。
 昭和42年度の場合、表4のように、峡南地区町村では最高であり、県下64町村のなかでも上位(6位)にある。
 このように保険税が急増しているのは、医療費の著しい増加がもたらしているものであり、国民健康保険制度がひろく一般に普及し、健康管理に対する認識がたかまっての受診率上昇、悪性疾病、交通事故等の災害などが原因ではないかと考えられる。
 しかしながら、中小商工業、労働者、農民など、比較的低所得階層の多い被保険者をかかえている国民健康保険運営にとっては、この保険税増額が、近い将来重大課題となることが考えられる。

  表3  保険税の推移
区分
年度
調定額 収納額 収納率 1世帯当り
調定額
1人当り
調定額
歳入額に対する割合 保険税
引上率
35
4,953,536

4,265,026
86

2,717

599
49


36 6,160,000 4,576,940 90 3,201 746 42 24
37 7,255,160 6,468,150 89 3,728 900 43 18
38 7,230,740 6,636,530 92 3,817 939 37  
39 8,744,540 8,162,080 93 4,729 1,184 41 21
40 10,474,930 9,929,000 95 5,845 1,473 35 20
41 14,553,000 13,764,140 95 8,176 2,105 38 39
42 19,366,130 18,803,694 97 11,312 2,923 43 33
43 22,198,120 21,549,990 97 14,076 3,504 40 15
 
  表4  峡南地区町村の保険税調定額 (42年度分)
区分
町村名
世帯数 保険税額 1世帯当り税額
上九一色村 390 963,630 2,471
三珠町 746 5,333,440 7,149
市川大門町 1,986 19,142,040 9,638
六郷町 944 8,816,060 9,339
下部町 1,839 16,565,260 9,008
増穂町 2,177 18,566,540 8,528
鰍沢町 1,072 9,134,620 8,521
中富町 1,472 13,612,830 9,248
早川町 962 7,941,360 8,255
身延町 1,712 19,366,130 11,312
南部町 1,012 8,570,830 8,469
富沢町 831 6,889,520 8,291
県平均 122,156 1,057,355,417 8,656