(二)旧身延村消防団の沿革とその活動
 旧身延村は、近代消防の発祥については、大野消防組規約を見るに、明治42年1月創立とあり、おおむね明治後半に至り、各部落に自治的消防組が設置されたことがわかる。
 大正4年8月、山梨県令第35号による「消防組規則施行細則」の公布とともに、組頭藤田佐一郎によって、身延村消防組の組織編成が確立した。
 昭和5年4月19日、睦合村南部の大火災発生するや、身延村消防組は直に応援出動し、身延線内船より南部に渡る際、富士川の激流に押し流された旗手片岡常市は、遂に尊い殉職者となり、身延消防史に長くその名を残している。当時の士気旺盛なるを回顧して感慨深いものがある。
 昭和6年1月1日、戸数800、人口4,100の身延村は町制を施行し、消防は身延町消防組と改称、こえて同年8月15日、時の町長深沢豊治により、消防組組織変更の件が提案議決され、定員削減による合理的な消防組の運営を図った事は特筆に値する。
 その理由として左のように述べている。
一、消防組規則施行細則改正ニ依リ副組頭ヲ置クコトヲ得ルニ付之ヲ増員スルコト。
二、当町ハ壮年者ノ出稼多ク為メニ常時定員ヲ満シ置クコトヲ不可能ニ付真ニ勤務シ得ル実人員ニ組員ヲ減ジ実績ヲ挙ケントスルニアリ。
 この改正による組織人員は下表のとおりである。
    記

 定員変更消防組組織表
消防組名 部名 定員 設置区域
組頭 副組頭 部長 小頭 消防手




本部 1 1       2  
第1部     1 7 91 99 大字身延(塩沢・新宿ヲ除ク)
第2部     1 4 52 57 大字・波木井
第3部     1 4 34 39 大字身延ノ内塩沢・新宿
第4部     1 4 27 32 大字大野
第5部     1 5 61 67 大字梅平
1 1 5 24 265 296  

 昭和13年(1938)2月16日、米国フォード会社製エンジンを持つ手引動力ガソリンポンプを第二部(波木井)において購入、その能力は「吸水高一二呎、ポンプ圧力一二八ポンドの時において放水量毎分約一一石、ポンプ型式タービン式」とあり、当時V8と称してその威力を大いに誇っている。
 昭和14年(1939)3月29日、時の町長望月是本は警防団令(勅令第20号)の公布により、消防組を警防団に改組するための諮問を町会に提出し警防団への改組設置を行なっている。その概要は左記の通りである。
 諮第1号 身延町会
 警防団令ノ規定ニ依リ身延警防団ヲ下記ノ通リ設置申請シタルニ対シ本県知事ヨリ其ノ会ノ意見ヲ諮問セラレタリ
 仍テ其ノ会ノ意見ヲ諮フ
  昭和十四年三月二十九日
身延町会議長
身延町長
  望月是本
一、組織及定員

警防団名 部名 定          員 設置区域
団長 副団長 部長 副部長 班長 団員




本部 1 2         3  
第1部     1 1 8 71 82 身延町方一円
第2部     1 1 8 50 60  〃 波木井
第3部     1 1 4 32 38  〃 塩沢新宿一円
第4部     1 1 4 43 49  〃 大野一円
第5部     1 1 8 39 49  〃 梅平一円
第6部     1 1 3 15 20 本院及支院一円
1 2 6 6 35 250 300  

一、給与(略)
一、予算(略)
一、設備資材
1、団員名簿   一冊
2、水利調査簿   六冊(各部一冊宛)
3、給与受払簿   一冊
4、貸与品台帳   六冊(各部一冊宛)
5、日誌及沿革誌   一冊
6、消防用機械器具   手輓ガソリンポンプ五台、腕用ポンプ七台、水道用ホース約三百七十間、ポンプ及其ノ他付属機械器具置用小屋十一棟、非常用水貯水池十二か所其ノ他ポンプ付属品一切
7、警報伝達用機械器具   動力用サイレン二箇、火見櫓鉄製五箇、木製四箇、警鐘九箇 (以下略)
 以上により警防団改組当時の身延町消防組の現有勢力を知ることができる。
 かくして警防団は戦後の昭和22年(1947)5月消防団令が公布されるまで続くのである。
 戦後の消防団近代化への発展の時期においては、近隣の村にさきがけて消防機械化への設備充実に乗り出し、昭和28年8月1日、1953年型市原式消防自動車ポンプを購入し、身延町消防団の消火機動力を一躍倍増したのは特筆すべきことである。
 下表に身延分団提供による旧村当時の歴代団長の氏名を掲げる。

 旧身延町(村)消防団歴代組頭ならびに団長
氏名 就任年月日 退任年月日 備考
藤田佐一郎 明治43年   消防組頭
藤田佐一郎 大正4年    
望月 祥 大正5年    
望月 九房 大正10年 大正13年  
阪上治良 大正13年   昭和6年より町制施行
深沢豊治   昭和5年  
佐野徳造 昭和5年    
阪上治良 昭和7年 昭和8年  
小笠原政義 昭和8年 昭和9年  
藤田常治 昭和9年    
望月源治郎 昭和10年 昭和12年  
内藤泰作 昭和12年 昭和13年  
田中不二雄 昭和13年 昭和14年 14年4月1日より警防団長
阪上治良 昭和15年 昭和16年  
佐野徳造 昭和17年 昭和19年  
小笠原政義 昭和19年 昭和20年  
佐野 肇 昭和21年 昭和24年 22年より消防団長
25年より南部支部長
藤田喜太郎 昭和25年 昭和27年 28年南部支部長
遠藤久雄 昭和29年 昭和30年  
昭和30.2.11身延町消防団となる