三、豊岡地区

(一) 日蓮宗寺院
  1 大石山 正慶寺
 相又下にあって、創立は正応3年(1290)3月28日と伝えられている。日蓮聖人が身延山へ入山の際に、この地を通り一奇石に休息なされた。その時、里吏庄左衛門が粟飯を午斎に供したことから、一名「粟飯寺」ともいわれている。
 庄左衛門の没後、その妻は1子をつれて身延に詣で、入門して尼となり、名を妙了日仏と称した。この寺の開山である。
 日仏尼の1子は弘安3年(1280)1月5日、自宅を寺としたのが、この寺の起りであるという。その1子は後に日了と号した。
 なお、日了上人の門弟日勢上人は、後に一の瀬に妙了寺を創建したとも伝えられている。
 現在、市川春英が46世の住職をしている。
 また、この寺には、宗祖御直伝の大黒天および、安産の護符水が伝わっている。旧身延山久遠寺末。

  2 蓮栖山 妙久寺
 相又上にあり、慶長4年(1598)4月28日に開山蓮栖坊日等上人によって建立された寺である。この寺は身延林蔵坊の末寺といい、開山の日等上人は、漆久保の望月家より出家し、身延第19世日道上人の門弟と伝えられている。
 現住職は高橋是雄である。旧身延林蔵坊末。

  3 妙梅山 報恩寺
 相又上にあり、開山は報恩坊日雄上人である。寛正年間開山によって建立されたと伝えられている。旧身延岸之坊の末寺で、日雄上人は身延山第9世日学上人の門弟である。
 現住職は高橋是雄(兼務)
 なお、「甲斐国誌」によると「古ハ真言宗ニテ小沢ト云処ニ在リキ、改宗シテ後河決ノ為ニ流亡セシヲ、武田六左衛門ノ先祖某今ノ地ニ移セリ」と記されている。

  4 光沢庵
 光子沢にあって、開山は身延山第22世日遠上人の弟子であった禅那院日忠上人である。承応2年(1653)4月28日に庵を結び隠居したと伝えられている。
 日忠師は、当区に居住した佐野将監の3男で、水戸檀林の中興となり、久昌寺の開山にもなった。旧身延林蔵坊の末寺で、現住職は20世の谷口教泰である。

  5 本国山 本成寺
 湯平にあって、身延山第22世日遠上人の弟子である本成律師日忠上人を開山としている。寛永2年(1625)4月24日に開山によって建立されたと伝えられており、身延武井坊の末寺といわれている。
 現住職は27世。河村泰散である。

  6 報恩山 妙正寺
 小田船原にあって、開山は身延山第12代日意上人門弟の成立坊日祈大徳である。文亀2年(1502)9月12日開山によって建立されたと伝えられている。
 後に安永3年11月16日烏有に帰したが、翌年日淳師により復興した。旧身延蓮盛坊の末。現住職は48世大石英光である。

  7 福徳山 善行寺
 小田船原にあり、開山は華光坊日秀上人である。応永18年(1442)3月開山によって創立されたと伝えられている。この寺は元真言宗で、日秀上人も初めは真言の僧であったが、元弘元年(1331)10月8日、身延山日台上人の弟子となり、寺もともに改宗した。旧身延本行坊末。
 現住職は43世吉田本周である。
 なお、「日蓮宗大観」によると、「創立延文元年(一三五六)四月四日」とも記されている。
 第3世日守師の代まで山号寺号がなく、応永18年3月身延山より山寺号を賜わったという。また、往時は下小田に在ったが、震災にあい、文正元年(1446)12月現在の地に再建されたと伝えられている。

  8 延寿山 本妙寺
 門野にあって、開山は身延山第6世日院上人の門下、正行院日如上人である。旧身延山直末にして、応安2年(1369)10月13日に開山が建立したと伝えられている。
 なお、「日蓮宗大観」によると、「創立応安五年二月八日」とも記されている。昭和14年烏有に帰したが、同18年復興された。現住職は、49世松本学昭である。

  9 大城山 妙覚寺
 大城にあって、開山は円妙院日徳上人である。旧身延南之坊の末で、暦応元年(1338)2月開山によって、建立されたと伝えられている。開山日徳上人は、南之坊の第2世日忍上人の門弟といわれている。初め妙覚坊と称していたが、寛文5年(1665)身延日奠上人より現寺号を賜わった。
 現住職は、46世の佐藤良覚である。

  10 道長山 唯勝寺
 大久保にあって、開山は身延山第27代日境上人門下、唯勝院日念大徳である。初め蓮盛坊末であったが後に身延直末となった。慶安元年(1648)3月、日念大徳によって、発願され、万治3年(1660)9月12日開山されたと伝えられている。
 現住職は42世小林恵祥である。

  11 安龍山 雲沢寺
 清子にあって、開山は身延山第13世宝聚院日伝上人である。旧身延山の直末にして、創立は天文15年(1546)2月3日と伝えられている。
 現住職は第31世今村本彰である。
 なお、清子にはもと「長心庵」(開山翁清庵日這上人。延宝3年10月創立)と、「一心庵」(開山正行院日敬上人。寛正3年3月創立)との二ヵ寺があったが、いずれも雲沢寺に合併されて、今日におよんでいる。

  12 玉林山 実教寺
 横根にあって、もと真言宗であったが改宗したもの。開基は不動院日成上人である。創立は文永11年(1274)5月17日となっている。付近に井泉があり傍に老桜があって、「桜清水」と称されている。そのもとに一石があり、日蓮聖人身延入山の砌(みぎり)、ここに休息して清泉を喫し、手にせる杖を地に立て祈誓されたと伝えられている。旧身延山直末にして、現住職は石川養正である。