(四)形容詞1、終止形には「ズラ」「ラ」がつく。例「赤イズラ」「早イズラ」例
「赤イラ」・「早イラ」またそのあとに「モン」をつける場合もある。例「赤イラモン」「早イラモン」 2、仮定形は条件を表わす助詞「バ」が続いて転化して「リァア」「キャア」となる。例「赤キァア」「赤ケリャア」「早ケリャア」
3、その他特殊なもの
(五)副詞、形容動詞標準語と変った副詞・形容動詞には次のようなものがある。
(六)助動詞1 可能を表わす「サル」は特殊な使い方がされている
2 使役の意味をもつ「セル」「サエル」は「カス」「カセル」となって使われる。
3 意志や推量には「ズ」「ザァ」「ズラ」「ジャア」等が使われる。
4 打消しの意志、推量の「まい」は「メエ」となって使われる。
5 希望の助動詞「たい」は「テエ」と転化して使われる。
6 断定は語尾に「ジャン」「ジャンカ」「ジャンケ」がついて強調、同意、勧誘の意味を表わす。
(七)接頭語について接頭語は種類も、使われる場合も非常に多い。そのため、言葉が荒々しく感じられるが、その反面親近感もうかがえ、素朴な味わいもある。種類はナ行、マ行、ワ行を除いた各行にわたっている。 ○ア行
イッパシル
ウッチグ(死ぬ)ウンナゲル、ウンネル、ウチックウ(食べる)ウックレル、オッタマゲル
○カ行
カットバス カッソグ
クンノム
コウルサイ、コナマイキ、コバカ
○サ行
シャラミグセエ、シャラウルセエ
シンノブイ ショッピク
スバカ スッコム スッコケル
ソックビ ソップリ ソンブリ
○タ行、ダ行
ダダッピレエ
ツックンダ ツッコビル ツンノメル ツッペエル ツッケエス ツンニゲル
トッペース トンノケル トンダス
○ハ行、バ行
ヒッタクル ヒッポカス ヒンマゲル ヒンワスレル ヒンヤスム
フンジバル ブッタクル ブンナゲル ブッタタク ブチカアル ブットバス
ボナク
○ヤ行
ヨリイル
以上身延町で現在も使われている方言を集めたが身延だけで使われているという特殊なものは見当たらない。しかし、身延町を中心とする一帯で使われ、河内方言の特色をはっきり備えていることがわかる。身延町の方言の特色について考えてみると、長い住民の生活の歴史が生み出した素朴な味わいと、苦しみの中からにじみ出た語気の荒さなどがうかがえる。 地理的条件の他に、町民の心の中に根強く残っている封建的な因襲や伝統にも影響されて、古い特殊な方言が残っている。 特に接頭語が多く、言葉が荒々しく感じられるのは、恵まれなかった祖先の生活の歴史を物語るものであろうか。交通の便に恵まれず、狭い耕地を生活のよりどころとしていた祖先の歴史の所産であることを考えると、方言にもまた捨て難い味わいを感じさせられる。 |