三、童唄(わらべうた)わらべ歌は、歴史的には平安時代末期「梁塵秘抄」にこまをうたったものの他数編が載っているのが、文献に見えた最初であるといわれている。このように昔から歌われていたであろうわらべ歌は、全国的に共通のものが多いとされているが、その内容は複雑である。 子ども自ら歌うもの、親が子どもに聞かせるもの、また、純粋に歌ばかりのもの、遊戯の加わるもの、唱えことばのようなものというふうに分類される。 また一方、子守り歌、季節の行事に歌われる歌、羽根つき歌、お手玉、手まり歌、なわとび歌、鬼遊び歌というふうにも分類される。この他童ことば、悪口歌、けんか歌などのように、わらべ歌と区別のはっきりしないものも、わらべ歌に含まれる。 全国的に知られるわらべ歌の内では、遊戯歌が約70パーセントを占めて一番多い。 次いで、手まり歌、お手玉歌が多いが、これらの中にはやたらに長い文句を連らねたのが見られる。 全般にわらべ歌は、旋律が単純で、音域がせまいという特徴をもっているようである。 全国的に共通なものが多いということは、先にも書いたが、やはり地方地方により大分改変されたもの、意味不明なものも多い。 これは、方言の問題もあろうし、子どもが口真似で伝えている間にまちがいをおこしたものもあろう。 時代の変遷により、年中行事などがすたれ、子どもたちの遊びが変わり、歳時のわらべ歌が消えてしまう時の勢はどうすることもできないが、土の中から生まれ、日なたのわらの匂いのするような懐しい歌声が聞かれなくなってしまうことに何となく寂しさを感ずる人も多いことだろう。 わらべ歌収集にあたり、大勢の人の協力をいただいたが、「もっといろいろ歌った記憶もあるが、忘れた」とか、「出だししか思い出せない」という人が多かった。 もはや人々の心にその断片すら残さないような遠いものになってしまったのだろうか。 身延町でも歌われたわらべ歌のいくつかを次にあげてみよう。 ア、手まり唄 ◇ あんたがたどこさ
あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ
熊本さ 熊本どこさ 船場さ 船場山には狸がおってさ それを猟師が鉄砲で打ってさ 煮てさ 焼いてさ 食ってさ それを木の葉で ちょいとかくせ ◇ 一里とらいらい
一里とらいらい らっきょ食ってしっししんげれ餅ゃ
きゃっきゃ きゃべつで ホイ ◇ いちもんめ
一もんめの いすけさん いもかいおりて とおりゃんせ
二もんめの にすけさん 忍術つかい とおりゃんせ 三もんめの さすけさん 猿飛佐助 とおりゃんせ 四もんめの よすけさん よちよち赤坊 とおりゃんせ 五もんめの ごすけさん 5人ばやし 冠者たち 六もんめの ろすけさん ろうそくいくら 6万円 七もんめの 七すけさん 七草八草 とおりゃんせ 八もんめの はすけさん 箱せこいくら 8万円 九もんめの 九すけさん くりくり坊主 くり坊主 十もんめの 十すけさん 重そうはいくら 10万円 ◇ 日露戦争
いちれつ談判破裂して
日露戦争始まった さっさと逃げるはロシアの兵 死んでもつくすは日本の兵 5万の兵をひきつれて 6人残して皆殺し 7月8日の戦いに ハルピンまでも攻め入りて クロバトキンの首をとり 東郷大将 万々歳 ◇ ひとひとつ
ひとひとつ ふたふたつ みつみいつ
イ御手玉唄よつようつ いついつつ むつむうつ ななななつ やつやあつ こここんで 無花果(いちじく)人参 山椒(さんしょう) しいたけ ごぼうに 向かえて 七くさ八くさ くわえて十よ たくさんあがれ おさよさんにみへて ころばんしょ ◇ 武夫と浪子
1番始めは一の宮
2は日光東照宮 3には佐倉の宗五郎 4には信濃の善光寺 5つは出雲の大社(おおやしろ) 6つ村々鎮守様 7つは成田の不動さん 8つ八幡の八幡宮 9つ高野の弘法さん 10で東京心願時 これほど神願かけたなら 浪子の病気もなおらんと 武夫が戦地にたつときは 白きま白きハンカチを うち振りながら ねえあなた 早く帰ってちょうだいよ ゴウゴウゴウとたつ汽車は 武夫と浪子の別れ汽車 二度と合われぬ汽車の窓 鳴いて血を吐く不如帰(ほととぎす) ◇ おさらい
おさらい おひとつ おひとつおろして おさらい
おみんなこんばんは、おてんじょえ おろしておさらい おみつおろしておさらい おひとつ おろしておさらい ◇おさらい
おさらい おひとおつめ つめた
おふたおつめ おつめ つめた おみおつめ おつめ おつめ つめた およ……おいつ……おむ……おな……おや……おく……おとおつめ……つめた ◇ 1羽のからす
1羽のからすがいち 2羽のからすがにい 3羽のからすがいち
ウ、なわとび唄にいさん 4羽…5羽…6羽…7羽…8羽…9羽…10羽 ◇ 大浪小浪
大浪小浪 ぐるりとまわって猫の日
◇ おはいり
○○さんお入り 最後のしゅうで
じゃんけんぽん 負けたお方は おぬけなさい ◇ ゆうびんやさん
ゆうびんやさん おとしもの
ひろってあげましょ 1枚2枚3枚…………10枚 ゆうびんやさん おぬけなさい ◇ くまさんくまさんまわれ右
くまさんくまさんまわれ右
くまさんくまさん片足あげて ……両手を上に……両手を横に ……両手をついて ……おぬけなさい ◇ 満州の山奥
満州の山奥で たしかに聞こえた豚の声
1匹ブウ 2匹ブウ……… 1匹ぬけた 2匹ぬけた……… ◇ 月火水木金土 日曜日
月火水木金土 日曜日
エ、子守り唄山とせ そよ吹けば さくらの 富士越えて ぴいひゃらぴいひゃら 三大師 終りの神様四大師 それ入(はい)れ それぬけろ ◇ 大寒小寒
大寒 小寒 山から小僧が泣いて来た
だんごの一つも くれてやれ ◇ ねんねん猫のけつ
ねんねん猫のけつ がにがはいこんだ
ひってもひっぱっても またはいこんだ おばあちゃんは そりょ見てはなたらした ◇ かんかんかつの山
かんかんかつの山へ鳥追いに
鳥をいく匹とってきた 千匹万匹とってきた そなとってきて どうなさる 焼いて はたいて 粉にして そなたが泣くとき なめさせる |