祝祭日の今昔

清子 鈴木富治
 (昭和14年ころ)
四大節
  新年(四方拝)(1月1日)
  紀元節    (2月11日)
  天長節    (4月29日)
  明治節    (11月3日)
 四大節には小学校で拝賀式を挙行した。
祭日
  春季皇霊祭  (彼岸の中日)
  神武天皇祭  (4月3日)
  秋季皇霊祭  (彼岸の中日)
  神嘗祭    (10月17日)
  新嘗祭    (11月23日)
  大正天皇祭  (12月25日)
記念日
  満州建国記念日   (3月1日)
  陸軍記念日     (3月10日)
  海軍記念日     (5月27日)
  支那事変記念日   (7月7日)
  満州事変記念日   (9月18日)
  戊申詔書下賜記念日 (10月13日)
  教育勅語下賜記念日 (10月30日)
  国民精神作興詔書下賜記念日 (11月10日)
拝賀式次第
  1 職員児童入場
  2 礼 職員児童一同楽器合図
  3 御影開扉
  4 唱歌(君が代2回)職員児童合唱、楽器伴奏
  5 職員児童一同御影に最敬礼、楽器合図
  6 学校長勅語奉読
  7 唱歌(勅語奉答)職員児童合唱、楽器伴奏
  8 学校長誨告
  9 唱歌(式日唱歌)職員児童合唱、楽器伴奏
  10 礼 職員児童一同 楽器合図
  11 御影閉扉
  12 一同退場
 御影閉扉の「時」は一般に(7)の次に行なわれたのが多かった。
 四大節には小学校の判任官待遇者は県庁へ、奏任官待遇者は宮内省へ賀状を呈出した。
    教育ニ関スル勅語
朕惟フニ我カ皇祖皇宗国ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ済セルハ此レ我カ国体ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦実ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹巳レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ独リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顕彰スルニ足ラン斯ノ道ハ実ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセコトン庶幾フ
 明治二十三年十月三十日
    戊申詔書
朕惟フニ方今人文日ニ就リ月ニ将ミ東西相倚リ彼此相済シ以テ其ノ福利ヲ共ニス朕ハ爰ニ益々国交ヲ修メ友義ヲ惇シ列国ト與ニ永ク其ノ慶ニ頼ラムコトヲ期ス顧ミルニ日進ノ大勢ニ伴ヒ文明ノ恵沢ヲ共ニセムトスル固ヨリ内国運ノ発展ニ須ツ戦後日尚浅ク庶政益々更張ヲ要ス宜ク上下心ヲ一ニシテ忠実業ニ服シ勤倹産ヲ治メ惟レ信惟レ義醇厚俗ヲ成シ華ヲ去リ実ニ就キ荒怠相誡メ自彊息マサルヘシ
抑々我カ神聖ナル祖宗ノ遺訓ト我カ光輝アル国史ノ成跡トハ炳シテ日星ノ如シ寔ニ克ク格守シ淬礪ノ誠ヲ輸サハ国運発展ノ本近ク斯ニ在リ朕ハ方今ノ世局ニ処シ我カ忠良ナル臣民ノ協翼ニ倚藉シテ維新ノ皇猷ヲ恢弘シ祖宗ノ威徳ヲ対揚セムコトヲ庶幾フ爾臣民其レ克ク朕カ旨ヲ体セヨ
 明治四十一年十月十三日
    国民精神作興ニ関スル詔書
朕惟フニ国家興隆ノ本ハ国民精神ノ剛健ニ在リ之ヲ涵養シ之ヲ振作シテ以テ国本ヲ固クセサルヘカラス是ヲ以先帝意ヲ教育ニ留メサセラレ国体ニ基キ淵源ニ遡リ皇祖皇宗ノ遺訓ヲ掲ケテ其ノ大綱ヲ昭示シタマヒ後又臣民ニ詔シテ忠実勤倹ヲ勧メ信義ノ訓ヲ申ネテ荒怠ノ誡ヲ垂レタマヘリ是皆道徳ヲ尊重シテ国民精神ヲ涵養振作スル所以ノ洪謨ニ非サルナシ爾来趨向一定シテ効果大ニ著レ以テ国家ノ興隆ヲ致セリ朕即位以来夙夜兢兢トシテ常ニ紹述ヲ思ヒシ俄ニ災変ニ遭ヒテ憂悚交、至レリ
輓近学術益々開ケ人智日ニ進ム燃レトモ浮華放縦ノ習漸ク萌シ軽佻詭激ノ風モ亦生ス今ニ及ヒテ時弊ヲ革メスムハ或ハ前緒ヲ失墜セムコトヲ恐ル況ヤ今次ノ災禍甚タ大ニシテ文化ノ紹復国力ノ振興ハ皆国民ノ精神ニ待ツヲヤ是レ実ニ上下協戮振作更張ノ時ナリ振作更張ノ道ハ他ナシ先帝ノ聖訓ニ恪遵シテ其ノ実効ヲ挙クルニ在ルノミ宜ク教育ノ淵源ヲ崇ヒテ智徳ノ竝進ヲ努メ綱紀ヲ粛正シ風俗ヲ匡励シ浮華放縦ヲ斥ケテ質実剛健ニ趨キ軽佻詭激ヲ矯メテ醇厚中正ニ帰シ人倫ヲ明ニシテ親和ヲ致シ公徳ヲ守リテ秩序ヲ保チ責任ヲ重シ節制ヲ尚ヒ忠孝義勇ノ美ヲ揚ケ博愛共存ノ誼ヲ篤クシ入リテハ恭倹勤敏業ニ服シ産ヲ治メ出テテハ一巳ノ利害ニ偏セスシテ力ヲ公益世務ニ竭シ以テ国家ノ興隆ト民族ノ安栄社会ノ福祉トヲ図ルヘシ朕ハ臣民ノ協翼ニ頼リテ弥々国本ヲ固クシ以テ大業ヲ恢弘セムコトヲ翼フ爾臣民其レ之ヲ勉メヨ
 大正十二年十一月十日
    勅語奉答
勝 安芳作歌
あやに畏(かしこ)き 天皇(すめらぎ)の
あやに尊(たふと)き 天皇(すめらぎ)の
あやに尊(たふと)く 畏(かしこ)くも
下(くだ)し賜(たま)へり 大勅語(おほみこと)
是(これ)ぞめできた 日(ひ)の本(もと)の
国(くに)の教(をしへ)の 基(もとゐ)なる
是(これ)ぞめでたき 日(ひ)の本(もと)の
人(ひと)の教(をしへ)の 鑑(かがみ)なる
あやに畏(かしこ)き 天皇(すめらぎ)の
勅語(みこと)のままに 勤(いそし)みて
あやに尊(たふと)き 天皇(すめらぎ)の
大御心(おほみこころ)に 答(こた)へまつらん

    一月一日
千家尊福作歌
上 真行作曲
   第1章
年(とし)のはじめの 例(ためし)とて
終(をはり)なき世(よ)の めでたさを
松竹(まつたけ)たてて 門(かど)ごとに
いはふ今日(けふ)こそ たのしけれ
   第2章
初日(はつひ)のひかり さしいでて
四方(よも)に輝(かがや)く 今朝(けさ)のそら
君(きみ)がみかげに 比(たぐ)へつつ
仰(あふ)ぎ見(み)るこそ たふとけれ

    紀元節
高橋正風作歌
伊沢修二作曲
   第1章
雲(くも)に聳(そび)ゆる高千穂(たかちほ)の
高根(たかね)おろしに 草(くさ)も、木(き)も
なびきふしけん大御世(おほみよ)を
仰(あふ)ぐ今日(けふ)こそ楽(たの)しけれ。
   第2章
海原(うなばら)なせる埴安(はにやす)の
池(いけ)のおもより猶(なほ)ひろき
めぐみの波(なみ)に浴(あ)みし世(よ)を
仰(あふ)ぐ今日(けふ)こそ楽(たの)しけれ
   第3章
天津(あまつ)ひつぎの高(たか)みくら
千代(ちよ)よろづよに動(うご)きなき
もとゐ定(さだ)めしそのかみを
仰(あふ)ぐ今日(けふ)こそ楽(たの)しけれ。
   第4章
空(そら)にかがやく日(ひ)のもとの
万の国(よろずくに)にたぐひなき
国(くに)のみはしらたてし世(よ)を
仰(あふ)ぐ今日(けふ)こそ楽(たの)しけれ

    天長節
黒川真頼作歌
奥 好義作曲
今日(けふ)の吉(よ)き日(ひ)は 大君(おほぎみ)の
うまれたまひし 吉(よ)き日(ひ)なり
今日(けふ)の吉(よ)き日(ひ)は 御(み)ひかりの
さし出(で)たまひし 吉(よ)き日(ひ)なり。
ひかり遍(あまね)き 君(きみ)が代(よ)を
いはへ 諸人(もろびと) もろともに
めぐみ遍(あまね)き 君(きみ)が代(よ)を
いはへ、諸人(もろびと) もろともに。

    明治節
1、アジヤの東日出(ひがしひい)づる処(ところ)
 聖の君(ひじりきみ)の現(あらは)れまして
 古(ふる)き天地(あめつち)とざせる霧(きり)を
 大御光(おほみひかり)に隈(くま)なくはらひ
 教(をしへ)あまねく 道明(みちあき)らけく
 治(をさ)めたまへる御代尊(みよたふと)。
2、恵(めぐみ)の波(なみ)は八洲(やしほ)に餘(あま)り
 御稜威(みいつ)の風(かぜ)は海原越(うなばらこ)えて
 神(かみ)の依(よ)させる御業(みわざ)を弘(ひろ)め
 民(たみ)の栄行(さかゆ)く力(ちから)を展(の)ばし
 外(と)つ国々(くにぐに)の史(ふみ)にも、著(しる)く
 留(とど)めたまへる御名畏(みなかしこ)。
3、秋(あき)の空(そら)すみ、菊(きく)の香高(かたか)き
 今日(けふ)のよき日(ひ)を皆(みな)ことほぎて
 定(さだ)めましける御憲(みのり)を崇(あが)め
 諭(さと)しましける詔勅(みこと)を守(まも)り
 代代木(よよぎ)の森(もり)の代代長(よよとこし)へに
 仰(あふ)ぎまつらん 大帝(おほみかど)。
(戦後)
    国民の祝日に関する法律
昭和23年7月20日
法律第178号
国民の祝日に関する法律をここに公布する。
    国民の祝日に関する法律
第1条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。
第2条 「国民の祝日」を次のように定める。
 別紙
第3条 「国民の祝日」は休日とする。
    国民の祝日
元日
(1月1日)
年のはじめを祝う。
成人の日
(1月15日)
おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。
建国記念日
(2月11日)
建国をしのび、国を愛する心を養う。
春分の日
(春分日)
自然をたたえ、生物をいつくしむ。
天皇誕生日
(4月29日)
天皇の誕生日を祝う。
憲法記念日
(5月3日)
日本国憲法の施行を記念し、国民の成長を期する。
こどもの日
(5月5日)
こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。
敬老の日
(9月15日)
多年にわたり、社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。
秋分の日
(秋分日)
祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。
体育の日
(10月10日)
スポーツをしたしみ、健康な心身をつちかう。
文化の日
(11月3日)
自由と平和を愛し、文化をすすめる。
勤労感謝の日
(11月23日)
勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。