印刷【国指定文化財】富士五湖
指定日:平成23年9月21日
所在地:身延町・山中湖村・富士河口湖
備 考:(本栖湖)
概説
富士山の北麓には、富士山の火山活動の過程で形成された複数の堰止湖(せきとめこ)が弧状に分布し、その中でも山中湖・河口湖・西湖・精進湖・本栖湖の五つの湖沼は、規模の大きさ及び優れた風致景観の観点から、その命名こそ昭和初年ではあるものの、特に「富士五湖」と総称され、多くの人々に親しまれてきた。
富士講の始祖として伝承のある中世末期の長谷川角行(かくぎよう)が富士山麓の八つの湖沼で行ったとされる水行に起源して、18世紀以降に「八海巡り」と呼ぶ修行の形態が定着し、富士山の登拝とともに富士講の信者にとって重要な意義を持つようになった。八つの湖沼の中でも、特に富士山に近在の湖沼を巡る「内八海巡り」の中心となったのが富士五湖であった。
また、世界的に著名な江戸時代の浮世絵にも描かれ、葛飾北斎の『冨嶽三十六景』に含まれる「甲州三坂水面」、歌川広重の『冨士三十六景』に含まれる「甲斐御坂越」等がある。特に北斎の作品は、河口湖の湖面に映る富士山の倒立像を描き、いわゆる「逆さ富士」の典型的な図像として著名である。
近代以降は、河口湖以外の湖沼も広く芸術活動の対象となり、山中湖を描いた川瀬巴水の版画『山中湖の暁』、西湖を描いた三島由紀夫の小説『鏡子の家』、精進湖を詠んだ与謝野晶子・斎藤茂吉の短歌等、数多くの作品が残されたほか、写真家の岡田紅陽が中ノ倉峠から撮影した本栖湖及び富士山の写真は我が国の千円及び五千円の紙幣の図様にも使われた。
このように、湖面を中心に、成因となった溶岩流から成る湖岸の一部をも含め、その風致景観が持つ観賞上の価値は高い。
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